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2015年7月

 体温調節に気をつけましょう

  連日、気温の高い日が続いておりますが、逆に体温は下げやすい時期です。知らず知らずに
  体に負担がかかっています。

  冷房の効いた涼しい室内と、高温多湿の室外との温度差は、体温調節を狂わせてしまいます。

  さらに、冷房の効いた室内で体を冷やし過ぎたり、冷たい飲料を飲みすぎたりして、体内温度
  を低下させてしまいます。


  現代の女性は、低体温の人が増えているそうです。日本人の平均体温でみると、約55年前と
  比較して0.75度下がっています。

  体温は、気力・生命力・新陳代謝と深い関係があり、体温の低下は、体内外の機能低下の指針
  になります。


  理想の体温は、37度程度です。

  糖質や脂質を分解してエネルギーを作り出したり、肝臓や筋肉などにエネルギーを溜めたり
  する身体機能の「代謝」がもっとも良くなるのが、体温37度です。これは、体内にある酵素
  が一番活発に働くことができる体温だからです。


  体温が1度下がると基礎代謝は約12%低下するといわれています。基礎代謝が低下すると
  いうことは、太りやすくなるということです。


  他にも体温が高いといろいろと良いことがあります。

  まず免疫力も高くなります。
  風邪などの感染症やアレルギー疾患にかかりにくくなり、ガン細胞に対する攻撃力も強くなり
  ます。
  体温が1度下がるだけで、免疫力が約37%低下するといわれていますので、免疫細胞にとっ
  ても極めて重要です。

  また、自律神経のバランスを安定させたり、血行が良くなり内臓機能を活発に働かせます。
  十分な栄養や水分、酸素が細胞の隅々まで行き渡り、不要な老廃物も蓄積されません。
  肌細胞の代謝も促し、肌もキレイになります。


  人間には生まれつき、さまざまな調節機能が備わっています。その機能を十分に働かせるため、
  体温を下げすぎないように注意しましょう。

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 健康肌をつくる菌

  今の暑い季節は、汗をかき油っぽくなる顔を洗顔剤でさっぱり洗いたくなります。

  でも、これが肌にとってとても良くないことです。


  皮膚に必要な常在菌には、「表皮ブドウ球菌」「アクネ菌」がいます。「美肌菌」とよく
  呼ばれる菌です。
  他には、「黄色ブドウ球菌」や「マラセチア真菌」も皮膚の常在菌として存在します。


  表皮ブドウ球菌は、皮脂成分を分解し脂肪酸を作ります。脂肪酸により肌表面を弱酸性に
  保ち、アルカリ性が大好きな病原菌の増殖を防いでくれます。

  アクネ菌も表皮ブドウ球菌と同じように、肌表面を弱酸性に保つ働きをします。

  ところが、アクネ菌はニキビの原因菌ともいわれます。それは、皮脂が過剰に分泌される
  (偏食、ストレス、寝不足、思春期などが原因)と、毛穴の入り口付近にも存在している
  アクネ菌が異常増殖し、炎症を起こしてニキビの原因となってしまうからです。

  ですので、肌環境を良くするためには、皮脂量のバランスを整え、弱酸性の状態をいかに
  保つかが大切になります。


  美肌菌の表皮ブドウ球菌やアクネ菌は、水で顔を洗うだけで、約80%が洗い流されて
  しまいます。ただし水だけで洗った場合は、残った菌がすぐに増殖し、30分から2時間
  ほどで元に戻ります。

  しかし、ここで洗顔剤を使うことによって、ほとんどの美肌菌がいなくなってしまいます。

  肌はアルカリ性に傾き、皮膚が極度に乾燥します。美肌菌も皮脂も洗い流されてしまって
  いるため、皮脂を元にして作られる脂肪酸がなかなかできなくなり、肌が弱酸性に戻るのに
  時間がかかってしまいます。元の状態に戻るには、およそ丸1日を要します。


  また、肌がアルカリ性になると、弱酸性の肌状態のときにはおとなしくしていた黄色ブドウ
  球菌ががぜん元気になり、肌の炎症を招き、かゆみや湿疹を引き起こすことになります。


  そのため、まずは健全な肌環境を作るためには、洗い過ぎないことが大事です。

  また、夜更かしは皮脂が分泌し続けてしまい過剰になるため、規則正しい生活を心がけ
  ましょう。

  そして、適度な運動で良い汗をかき、バランスのよい食事もして、美肌な肌環境を作り
  上げましょう。
 

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 リンゴ病もウイルス感染症

  リンゴ病(伝染性紅斑)が大きな流行となっています。

  6月22日から28日の1週間の患者数が通年より多く、滋賀県など5県で警報レベルに達し
  ています。
  東京都も、6月15日から21日までの1週間の患者数が警報基準を超え、流行が広がってい
  ます。患者の約71%は、6歳以下の小児です。


  リンゴ病もウイルス感染症の一つで、パルボウイルスB19が原因となります。

  感染経路は飛沫感染または接触感染ですが、感染力が弱いため、急激に感染拡大することは
  ほとんどありません。
  また、紅斑が現れたときには、ほぼ感染力が無くなっています。そのため、逆に感染が広がり
  やすいともいえます。


  感染すると、10日から20日の潜伏期間後、頬に蝶翼状の紅斑が出現することが特徴です。
  頬に続いて手や足に発疹がみられます。他の部位にも発疹が出ることがあります。
  紅斑が現れる前は、発熱やせき、鼻づまり、鼻汁などの風邪のような症状が必ず発症します。


  リンゴ病に対する特別な治療法はなく、対症療法のみです。ワクチンもありませんが、幼児期
  や小学生のうちに感染することが多く、大人になるまでに一度感染すると、ほとんどの人が
  免疫を獲得します。

  子供のうちの感染は症状が軽いため、一度感染した方がいいのかもしれません。
  但し、大人が感染すると、関節痛や頭痛を引き起こし、関節炎を発症する場合が多くあります。
  微熱や倦怠感が長引くこともあり、症状が重くなりがちです。

  また、妊婦の方が感染すると、流産につながる可能性が高くなるため、もっとも注意が必要です。


  この時期は、三大夏風邪の手足口病、プール熱、ヘルパンギーナの流行期でもあります。

  体力の低下、抵抗力の低下はかかりやすくなります。
  しっかりと睡眠と食事をとり、規則正しい生活を心がけましょう。


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 人に必要な菌

  ウイルスには、人間にとって必要なウイルスがいる。菌にも必要な菌がいる。


  ウイルスの中には、人間の進化の過程で重要な役割を果たしてきたウイルスがいることが
  分かってきています。

  菌というと悪いイメージを想像しがちですが、菌の中にも人間に必要な菌がたくさんいて、
  その菌の力を借りて生きています。


  人と菌との係わり合いは、胎内での無菌状態あと、生まれたときから菌と共に生きること
  が始まります。そして、一般的に常在菌といわれる菌が外部との接触により口や肛門など
  を介して感染し定着していきます。


  常在菌は、腸内にもっとも多く生息し、その数は100兆個! 種類は400種類といわ
  れています。他にも、口腔内や皮膚表面にも棲みついています。

  常在菌の中で代表的なのは、乳酸菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、緑膿菌、
  肺炎球菌などです。胃がんとの関係が指摘されているピロリ菌も人口の約半分の人が保菌
  しているといわれる常在菌の一つです。


  これらの常在菌は、人の身体で棲み分けがしっかりできています。
  棲み分けの平衡状態が保たれているのときは、外部から新たな病原菌が少しくらい侵入し
  てきたところで、常在菌が防御し身体を守ってくれますし、他にも人のために働いてくれ
  ます。
  常在菌はそれぞれの菌がいるべき場所にいる限り、人体に悪い影響を及ぼしません。

  しかし、本来いるべき場所でないところに侵入すると、悪さをしだします。

  何らかの理由で身体の免疫機能が低下し抵抗力がなくなると、常在菌の平衡状態が崩れます。
  疲れやストレス、病気、抗生物質による一部の常在菌が弱ることなどが原因となります。

  そうなると、常在する場所で異常増殖して炎症を引き起こしたり、血流に侵入して別の部位
  に感染し病気を発症してしまいます。外部から侵入してくる病原菌に対して防御力も弱まっ
  てしまいます。

  ですので、常在菌の平衡状態を保つことが、健康維持や病気の予防には非常に大切です。
  それには免疫力を下げないことです。


  これからの季節は、冷たいものを取り過ぎがちになります。
  あまりにも冷えたものを取り過ぎると、体内温度が下がることで免疫力も低下してしまいます。

  中国の薬膳の考え方に、「冷たいものは健康に悪い」というものもあるように、体を冷やし
  すぎることは健康によくありません。

  普段から免疫力を下げないように気をつけましょう。


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 人間があるのはウイルスのおかげ

  ウイルスといえば、人間にとって病気を引き起こす、やっかいな微生物の印象しかありません。
  MERSもエボラ出血熱も、デング熱もウイルスによって発症します。

  しかし、最近の研究で、生物は進化の過程でウイルスの遺伝情報を取り込み、ウイルスに対する
  免疫機能を獲得してきたことが分かりつつあります。


  京都大ウイルス研究所の教授によると、人のゲノムには、ウイルス由来と考えられる遺伝情報が
  25万6千個以上あるということです。


  ウイルスは、自分自身では増殖することができないため、人の細胞の力を借りて増殖します。
  このとき、細胞のゲノムにウイルスの遺伝情報が組み込まれてしまうことがあるということです。
  人だけでなくあらゆる動物も同様のようです。

  いろいろな種類のウイルスの遺伝情報が組み込まれることで、あるウイルスに対して同じ遺伝情報
  を持っていれば防御機能を発揮し、持っていなければ、病気を発症してしまうということです。


  昨年から恐れられているエボラウイルスは、人間に対しては害を及ぼしますが、エボラウイルス
  の遺伝子がゲノムに含まれているある種のコウモリの一部は、感染にしても病気を発症しないこと
  も分かっています。


  また驚くことに、ウイルスは人間の進化の過程で、その組み込まれたウイルス由来の遺伝情報が
  重要な役割を果たしてきたということも解明されてきています。

  人体に不可欠な遺伝情報に生まれ変わったものが、ウイルス由来の遺伝情報の中にあるという
  ものです。

  哺乳類の軟らかい皮膚を作るとされる「サスペース」、哺乳類が子宮で胎児を育むために不可欠
  な遺伝子とされる「シンシチン」などの遺伝子は、ウイルス由来の遺伝子と考えられるといわれ
  ています。


  ウイルスが出現したのが、およそ30億年前といわれています。生物が誕生したのが、それより
  ずっと後です。人はもっともっと後になります。

  ウイルスは、いつも危険視される存在でありますが、生物や人よりもずっと前から存在し、共生
  してきたことを考えると、ウイルスに対する見方が変わります。

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