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2016年7月

 EB(エプスタイン・バー)ウイルス感染症

  世の中には今まで聞いたことがない、いろいろなウイルスの感染症があります。
  この「EBウイルス感染症」もあまり馴染みがありませんが、実は非常に身近な感染症で、かなり
  の確立でかかる病気です。

  日本では、3歳までに70%以上の子供が感染し、成人では90%以上の人が感染しているといわ
  れています。


  原因となるのは、EBウイルスというヘルペスウイルスの一種で、ウイルスの発見者であるエプス
  タイン・バーの頭文字から名が付きました。


  あまり知られていないのは、感染してもほとんど症状が現れず、現れても風邪の症状ぐらいで済む
  ため、知らずにかかっていたことの方が多いからかもしれません。
  そして一度感染すれば免疫ができ、二度と感染することはありません。

  ただし、若年成人になってからかかると、血液中に大量の白血球がみられる「伝染性単核球症」と
  いう重い症状が生じることがあります。

  主な症状は、発熱・極度の疲労感・リンパ節の腫れ・咽頭炎や扁桃炎などが現れます。


  感染経路は、主に飛沫感染で伝染します。

  感染するとウイルスが白血球にとどまり、唾液中にウイルスを周期的に排出します。この時、最も
  他の人に感染する可能性が高くなり、キスや回し飲みなどの密接に触れ合うことで伝染してしまい
  ます。


  EBウイルスを調べるためには血液検査が必要ですが、症状が風邪などに似ていますので、まず
  アデノウイルスやインフルエンザといった他の感染症が疑われ、鼻などの粘膜の検査で済まされ
  てしまうこともあります。

  症状をよく観察しながら、医師に相談することが適切だと思われます。


  EBウイルス感染症には特効薬はありません。
  ウイルスが原因ですので抗生物質は効果がありませんし、現在実用化されている抗ウイルス薬も
  効果が認められていません。

  症状に応じて対症療法を行いながら、自然に治るのを待つしかありません。


  感染しても発症しない免疫力をつけることが、何よりも安心で重要です。

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 都が取り組む-感染症の職場まん延予防

  東京都は、風疹などの感染症を企業ぐるみで予防する取り組みを進めるため、昨年10月より
  「感染症対応力向上プログラム」を始めました。

  感染症が職場でまん延すれば、特に中小企業は事業継続が難しいということで、都が中心と
  なって、「感染症理解のための従業員研修」や「風疹の予防対策の推進」、「感染症事業継続
  計画の作成」の3コースを用意しています。


  なぜ風疹の予防対策かいうと、平成24年から25年にかけて大規模な風疹の流行が起こり、
  東京都の感染者の約9割が20歳から60歳の働く世代であり、職場が感染経路になったと
  いわれているからです。

  現在の20代から40代の人たちは、子供の頃に定期予防接種を受けた人が少ないため免疫
  不十分なその年代の男性を中心に感染が拡大したとされています。

  平成25年の風疹発症者は、約1万4300人に達しており、前年より激増しました。
  昨年はその約100分の1にまで激減しているようですが、数年ごとに流行を繰り返しており、
  警戒を怠ることはできません。


  上記3コースには達成基準があり、従業員研修なら従業員の8割以上が受講する、風疹の予防
   対策は抗体保有者が9割以上いる、となっています。

  その他企業にニーズに合わせて、結核やデング熱、ジカ熱、エボラ出血熱なども勉強すること
  ができるようです。


  アメリカの大学の研究では、風邪を引いたスタッフが一人いるだけで、オフィスの大半のもの
  が半日でウイルスに汚染されるという研究データを発表しています。


  職場が感染の中継基地になる可能性は十分にあります。

  ひとりの従業員が感染症にかかったときのリスクは、その従業員だけでは済まないため、企業
  にとって感染症の予防対策は十分に取る必要があります。


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 スーパー耐性菌の拡大懸念

  もうすぐオリンピックが開催されるリオデジャネイロの海岸で、抗生剤に強い耐性をもつ「スーパー
  耐性菌」が発見されたことが話題になっています。

  発見されたのは「カルバペネム耐性腸内細菌科細菌」で、「悪夢の耐性菌」の異名で最近、注目を
  集めているスーパー耐性菌です。

  カルバペネムというのは、最後の切り札といわれる強力な抗生物質のことです。


  この細菌の感染者数が急増し、世界的な広がりを見せており、米国疾病対策センター(CDC)が
  警告を発し危機感を強めています。

  アメリカでは、年間推定9,000人が感染し、約600人が亡くなっています。
  日本では、年間約1,300人が感染し、52人が亡くなったデータが取られています。


  現在、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌に唯一有効だとして、「コリスチン」という、さらに強力
  な抗生物質が用いられています。
  コリスチンは1959年からある抗生物質で、重い感染症の治療に用いられてきました。腎毒性が
  高いため、一旦人体への使用を中止していましたが、近年、耐性菌の出現により、最終選択薬とし
  て再び使用されています。

  しかし、5月にそのコリスチンすら効かないカルバペネム耐性菌の感染がアメリカで初めて確認さ
  れました。
  すでに中国や欧州では確認されていましたが、感染が確認された女性は海外渡航暦のなかったため、
  拡大が懸念されています。


  耐性菌が増え続けている原因は、抗生物質の使い過ぎだと言われています。

  世界の抗生物質の使用量は増え続けており、特にインドの消費量が激増しています。
  インドでは、強い抗生物質でも簡単に手に入れられる状況であり、軽い病気でも、すぐに治そうと
  抗生物質を多用する傾向があるようです。
  そのため、耐性菌を爆発的に増やしていると指摘する専門家もいます。

  日本では、風邪であっても、とりあえずといった形で抗生物質を出す医師が非常に多くいると思わ
  れます。
  しかし、ウイルスに対して抗生物の効果はありません。2次感染の予防にもならないといわれてい
  ます。


  耐性菌の拡大は世界的な問題となっており、日本政府も、2020年までに抗生物質の使用を3割
  減らす方針を掲げました。

  患者になる側も、抗生物質に関する知識を持ち、無用な薬の摂取を控えることは大切です。

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 森林や草地にいる-マダニ感染症

  この季節は、キャンプやハイキング、昆虫採取など屋外で活動する機会が多くなります。

  それに合わせるように春から秋にかけて活発に活動するのが、“ダニ”です。

  ダニの中でも「マダニ」は、主に森林や草地などの屋外に生息し、刺されるリスクが高くなる季節
  でもあります。

  マダニは、アレルギーなどの問題になる寝具や衣類などに発生するヒョウヒダニとは全く種類が違い
  ます。


  このマダニで問題になっているのが感染症です。


  「重症熱性血小板減少症候群」(SFTS)というダニ媒介性感染症で、2011年に中国の研究者
  らによって発見された「SFTSウイルス」が原因となります。

  日本では、2013年1月に初めて確認されましたが、その後の調査で2005年から感染していた
  事例があったことが確認されています。


  2013年3月から本年6月までの統計で、日本での感染者数は185人が確認されており、毎年
  約60人が感染しています。
  地域別でみると、石川県以西でのみの発生となっています。


  すべてのマダニがSFTSウイルスを保有しているわけではありませんが、保有率など詳しいことは
  分かっていないようです。


  SFTSウイルスを保有しているマダニに咬まれることにより感染し、6日から2週間程度で、熱など
  風邪に似た症状が出て、重症化すると神経症状、リンパ節腫脹、出血症状など様々な症状を引き
  起こします。

  致死率は、最近の調査で6%程度とされています。


  予防はダニに咬まれないようにするしかありません。
  野山、草むらに出かける際には、できるだけ肌の露出をさけ、直接草むらに座ったりするのは避け
  ましょう。

 

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