2016年2月
インフルエンザ予防が変わる
  インフルエンザの流行がピークを迎え、厚生労働省の発表では、2月8日から14日の1週間に
  おける全国の推計患者数は約205万人に達しました。
  これだけ毎年同じように流行するインフルエンザに対して、罹ってから対処するから、罹らない
  ようにする予防の方向へ注目が集まっています。
  その中で広く普及してきたのが「インフルエンザワクチン」です。
  平成25年度のデータになりますが、実際に1,620万人以上の人がインフルエンザワクチンを
  予防接種しています。
  但し、現在のインフルエンザワクチンは、あくまでも重症化を防ぐことが目的で、感染は防ぐこと
  ができません。
  また、その年に流行しそうなウイルスの型を予測してワクチンを作りますが、予測がはずれると
  効果が出ません。
  そこで、今開発が進んでおり注目されているのが「鼻ワクチン」です。
  従来の注射するタイプと違い、鼻に噴霧する方法でワクチンを鼻や喉の粘膜から取り込みます。
  これによって、粘膜に抗体ができるため、ウイルスが鼻や喉の粘膜に感染しようとすると、抗体
  がブロックするという作用が期待できます。
  感染する前段階でブロックできるため、感染そのものを防ぐというものです。
  また、粘膜にできる抗体はウイルスをブロックする能力が高いと考えられており、そのため、
  ウイルスの型が違っても効果が期待できる可能性があります。
  この鼻ワクチンは、10年前にアメリカで承認され、欧州では2年前に承認されていますが、まだ
  日本では承認されていません。
  そのため、一部の医療機関で接種できるのは、輸入されたワクチンになります。
  国内では、現在3つの鼻ワクチンが開発中です。
  それぞれ原材料としてウイルスの使い方が違っており、効果に特徴がありますので、承認された
  際には注意が必要です。
  3つの中でも、アストラゼネカの開発が一番進んでおり、17年度にも発売される見通しで、欧米
  ではすでに販売されています。
  今後鼻ワクチンが登場してくれば、毎年のインフルエンザの流行に恐れる必要がなくなるかも
  しれません。
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インフルエンザ患者数が激増
昨年末ころから増加傾向であったインフルエンザの患者数が、ここにきて急激に増加しています。
  厚生労働省によると、全国の指定された医療機関約5,000ヶ所(定点)の1定点当たりの患者報告数
  は、2月1日から7日までの第5週で34.66に上っています。患者数にして171,570人になります。
  1月の初めの週で定点当たり報告数が2.02となり、流行開始の指標である1.00を上回ってから、
  1月25日から31日では22.57と前週の2倍に増加しました。
  さらに今回の発表で1.5倍に増加しています。
  都道府県別では、神奈川県が48.95でトップとなっています。次に埼玉県(47.52)、愛知県
  (45.24)、千葉県(44.91)、福岡県(44.40)、北海道(43.75)とと続いており、
  前週から比較して首都圏が急激な増加傾向にあります。
  東京都も39.43で、前週より1.5倍に増加しています。
  年齢別では、5~9歳が一番多く約40万人と飛び抜けています。次に多いのが0~4歳と10~14歳で、
  それぞれ約22万人となっています。その他の多い年代では、40代が約19万人、30代が約18万人と
  なっています。
  疾患年齢層をみると、集団生活よる小中学生の感染リスクが高いことが分かります。
  学級閉鎖、学年閉鎖が相次いでおり、第5週において学級閉鎖は4,765件、学年閉鎖が1,153件
  となっています。休校も77校あります。
  学級閉鎖数を都道府県別でみると、愛知県が444クラスで一番多く、次いで東京都で428クラス
  となっており、この2都県が飛び抜けています。
  厚生労働省は、今シーズンの流行開始時期が1ヶ月程度遅かったため、流行ピーク時期も例年より
  遅れ、2月後半から3月にずれ込む可能性があり、過去11シーズンの例からピーク時期が遅れても
  疾患者数が低く推移したわけではなかったため、発生動向には注意しておく必要があるとしています。
  感染対策の基本としては、飛沫感染対策としてのマスクやうがい、接触感染対策としての手指衛生を
  徹底することが重要です。
さらに感染リスクを減らすために、電話しょうどく、パソコンしょうどくもプラスしましょう。
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「レンサ球菌咽頭炎」が増加
  先ごろまで、おたふく風邪(流行性耳下腺炎)の流行が懸念されていましたが、第3週(1月18日~
  1月24日)までにおいては収束傾向にあります。
  逆に流行の兆しがみえているのが、小児に多い急性の咽頭炎である「A群溶血性レンサ球菌咽頭」
  です。
   国立感染症研究所によると、指定医療機関(定点)から報告される定点当たりの報告数が3週連続
  で増加しており、過去5年の同時期と比較してかなり多くなっています。
  第3週(1月18日~24日)における全国の報告患者数は9,552人で、定点当たり3.03人と
  なっています。
  都道府県別で一番多いのは山形県(8.45人)で、次に鳥取県(7.37人)、福井県(5.95人)、
  静岡県(5.83人)、鹿児島県(5.27人)と続いています。
  患者数としては東京都が一番多いのですが、定点当たりは全国平均と同数値となっています。
  A群溶血性レンサ球菌感染症は、A群溶血性レンサ球菌(溶連菌)によって引き起こされる上気道
  の感染症です。
  一般的な症状としては、2~5日の潜伏期間を経て、突然の38℃以上の発熱、のどの痛み、赤い
  ぶつぶつがあらわれる苺状の舌などです。症状は大体1週間以内に改善します。
  まれに喉や舌、全身に赤い発疹が拡がり高熱を伴う猩紅熱に重症化することがあります。
  また、肺炎や髄膜炎、リウマチ熱、急性糸球体腎炎などの合併症を引き起こすこともあります。
  症状は風邪のようですが、咳や鼻水がほとんどありません。
  ウイルス性の風邪と違い、合併症を引き起こさないためにも、しっかり除菌することが大切です。
  感染経路が患者の咳やくしゃみのしぶきによる飛沫感染か、細菌が手に付着して口などに触れる
  ことによる接触感染ですので、予防対策は衛生管理の基本である手洗い、うがい、マスクが有効です。
  電話しょうどくは、溶血性レンサ球菌に対しても有効です。
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続く見えない脅威
  WHOは、中南米で感染拡大している「ジカ熱」感染症にについて、「国際的な公衆衛生上の
  緊急事態」を宣言しました。
  一昨年のエボラ出血熱での緊急事態宣言以来になります。
  WHOとECDC(欧州疾病予防管理センター)によると、昨年5月にブラジルで発生してから、
  中央および南米、カリブ海地域では21の国や地域まで拡大しているということです。
  その他にも、アジア・西太平洋地域では5カ国、インド洋地域のモルジブ、アフリカのカーボ
  ベルデでも確認がされている模様です。
  ジカ熱は、ジカウイルスによる感染症で、蚊が媒介して感染することが分かっていましたが、
  人から人へ感染したのではないかという症例も出てきています。
  ジカウイルスは、1947年にウガンダのジカ森林のアカゲザルから始めて発見され、その名
  が付いたのでしょう。人からは1968年にナイジェリアにおいて発見されました。
  2000年代に入ってジカ熱の流行が何度かあり、2013年のフランス領ポリネシアでは約1万人
  の感染が報告されています。
  今回の感染拡大は桁違いの規模で、ブラジルだけで150万人以上が感染しているとみられ、
  WHOは、中南米の感染者が最大400万人に達すると推計しているようです。
  ジカ熱の症状としては、ほとんどの場合、軽度の発熱、頭痛、関節痛などの症状で、一昨年
  に問題となったデング熱より軽症といわれています。
  また、妊婦が感染すると、新生児が脳の発達が遅れる小頭症となる確立が高くなると指摘
  されております。実際に、2015年10月から2016年1月までの間に、3,530人の小頭症
  症例が確認されており、こちらの方が問題となっているようにうかがわれます。
  その他、ギラン・バレー症候群との関連も指摘されています。
  ジカウイルスという、また聞き慣れないウイルスが出て来ました。
  エボラウイルスやデングウイルス、インフルエンザウイルス、次から次と目に見えない病原
  細菌やウイルスの脅威にさらされています。
  身を守るために、感染のリスクを最大限に減らす予防が大切です。
また、細菌やウイルスに打ち勝つために、体の免疫力を上げることも重要です。
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